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「私、だましたりしません。誠実さが売りです」
「世も末だ……」
男はじっとオリヴィアを見た。そして彼女の右手を見る。そこは赤く腫れていた。
「何で困ってるんだ?」
「はい?」
「金に困ってこの仕事をしているんだろう?」
「ええ。今月中にあと6カードゥどうしても必要で」
「きれいな服を着ている。家は金持ちだろう?」
「親に内緒で必要なんです」
母にこのことは絶対秘密なのだ。
男は再び天を仰ぎ、それからため息をついた。
「嬢ちゃん」
「はい」
「乗りかかった船だ。俺が払ってやるよ」
「ただで貰うわけには」
「右手、怪我させてしまった。その治療費として俺は10カードゥを渡す。いいな?」
「いいんですか」
金を渡される。しかし、オリヴィアはこの金を治療費としては使わないだろう。それは男もわかっている。大人の嘘だ。
「ほら、家に帰って真っ当に生きな」
「道に外れたことはありません!」
オリヴィアはそう言って、手首を抑えながらその場から駆けた。
男はその後姿をずっと見ていた。
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