第4話

1/5

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ

第4話

 その日、朝からセオドアはいらいらと私室を行き来していた。そして使用人を呼び出して手紙がないことを確認してさらに髪を掻きむしった。  今日は卵祭りである。恋人たちが卵の殻に絵を描いて街中に飾り、永遠の愛を誓いあう日である。  こうした行事のとき、いつもなら一週間前にはオリヴィアから誘いの手紙が来るのだが、それがいくら待っても来なかった。まさか当日にいきなり来るつもりかと思い、今日こうして着替えて待っているが、昼過ぎになっても何の音沙汰もない。  苛立ちは頂点に達し、セオドアは馬車に飛び乗るとオリヴィアの家に向かったのだった。  家に着くと、いつものようにオリヴィアの母親が出迎えた。  彼女は両手を合わせて、セオドアに行った。 「まあ、お見舞いに来てくださったのね」  何の話かわからず、セオドアは首を傾げる。 「見舞い……?」 「ええ? オリヴィアったら、そそっかしくて、それであんな怪我を……」 「怪我!?」  セオドアは驚き、そしてセオドアが驚いたことに母親が驚いた。  応接室で待っていると、静かな足音がしたあとにドアが開き、オリヴィアが入って来た。 「ごきげんよう、セオドア様」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加