第4話

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 膝を曲げて挨拶をする彼女の右手に包帯が巻かれているのを見て、セオドアは眉間に皺を寄せる。 「……怪我、だと?」 「はい。右手を」 「手紙も書けないほどの怪我か?」 「手紙?」 「今日は卵祭りだろう。君から誘いがなかった」 「ええ。でも、怪我をしていますから行けません。卵に絵を描こうにも、筆も持てませんし……節約になりました」  例の男からもらった10カードゥはまだオリヴィアの手元にある。母はオリヴィアが怪我をしたから大事をとって行かないと説明したら「そうね。そうしたらいいわ」と言っていた。  つまり、行事での出費を1回分節約できたのである。  満足げなオリヴィアに対して、セオドアは不満げだ。 「一報があってもいいんじゃないのか」 「でも、卵祭りに行くという約束をしていないのに、行けないと連絡するのは変でしょう?」  セオドアはため息をつく。 「そうじゃない。恋人が怪我をしたなら、見舞いに行くのがふつうだろう。母親は怪しまなかったのか」 「それはまあ、大丈夫でしょう。あなたがこうして来ましたから。……でも、今日は私が呼んだわけではありませんから、お金は支払いませんよ」
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