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艶のある黒髪、水色の瞳。均整のとれたすらりとした手足。
こないだオリヴィアに治療費として10カードゥをくれた男である。
「あ、10カードゥさんだ」
オリヴィアはその男をそう呼んだ。彼の名前を聞きそびれたのだ。
彼は酔いつぶれ、何人かの男たちに介抱されている。
「もう、誰だ団長にこんなに飲ませたの」
「祝いの席だからってやりすぎだぞ」
「いやー、まさか団長が酒に弱いなんて」
「ははは。人は見かけによらないもんだ」
オリヴィアは男たちに近づくと、ひとりの袖を引いた。
彼女の頭にはいい案が浮かんでいた。
男のひとりが振り返ると、オリヴィアは迷いなく言った。
「その人、私のお客さんです。私が宿に連れ帰ってもいいですか?」
「え!?」
それを聞いた男に衝撃が走る。
「なんだ?」
「アシャー団長が女を予約してたって……!」
「ええ!?」
「ええええええ!?」
「団長、女に興味が!?」
ざわつく男たちを無視して、オリヴィアは地面に座り込んでいる「10カードゥさん」の肩を叩いた。
「こんばんは。私のこと、わかりますか?」
男はのろのろと顔をあげる。そして、小さく言う。
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