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第6話
しかし、これでは報酬がもらえない。
彼の荷物はある。もしかしたら中には財布が入っているかもしれない。一瞬だけ、勝手に財布から金を抜くという考えがよぎったが、それはまずいだろうという育ちのよさが出てしまった。
結局、オリヴィアは男の隣で眠りについたのだった。
「ああ」
ここまで思い出して、オリヴィアは男が何を謝罪しているのか首を傾げた。彼はいっこうに頭をあげない。
「なんということを」というのは、オリヴィアを放っておいて寝たことだろうか、それとも、こんな状態になるまで飲んだことだろうか。いや、彼は何か誤解をしているのかもしれない。ようやくそこまで思い至って、オリヴィアは顔をあげた。
「あ、大丈夫です」
「大丈夫なもんか……!」
なるほど。オリヴィアは合点する。もしかして、女を買うことに抵抗があったのかもしれない。思えば、最初にあったときも買ってくれなかったし、金も「治療費」と言い張っていた。
「ほんとうに、大丈夫ですよ。昨日は何もなかったので」
「何もなかったはずがないだろう! この状況で!」
男は自分のシャツを示した。
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