第6話

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 男の白いシャツははだけている。オリヴィアが彼を起こそうと顔に水をかけた時にシャツが濡れてしまったのだ。そのあと、風邪をひいてはいけないと思って脱がせようと頑張ったのだが、途中で男が何度も寝返りを打つせいでボタンが飛んでしまった。  男はそのボタンがなくなったシャツを羽織りながら真っ青になっている。  対して、オリヴィアはしっかり連れ込み宿の備え付けのガウンに着替えている。  ――いい年の男女が、この状況で何もなかったとはにわかに信じがたいだろう。  オリヴィアは参ってしまった。 「うーん……とりあえずお金は」  もういらないですよ、と言ってあげるつもりだったのだが、男は食い気味に尋ねた。 「あ、ああ。ええと、いくらだ」  オリヴィアは男をじっと見つめる。  オリヴィアは昨夜何もしなかったが、時間をあげた、と考えるならいっしょにいた時間の分だけ金をもらう権利がある。  セオドアだって、いっしょにいるだけで、手紙に返事を書くだけでも金を請求してくる。  オリヴィアはセオドアと同じく悪徳な令嬢になった気分で、金額を提示する。 「ろ……」
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