第6話

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 6カードゥ、と言いかけて、やめた。オリヴィアはいつだったか見た私娼の真似をして言う。 「いくらくらいの価値がありました?」  その言葉に、男は頭をがしがしと掻くと、財布をそのままオリヴィアに渡した。ちらと見ただけだが、中には30カードゥ以上入っているようであった。 「今持ち合わせがそんなにない。あとは、これでいいか?」  そしてさらに小さなものをオリヴィアに差し出す。オリヴィアはそれを受け取った。 「なんです、これ」 「指輪だ。金でできている」 「金! 十分です」 「なあ、あんた、なんでまだ金に困ってるんだ」 「いま解決しました」  ほんとうに、十分だ。これだけあれば、叙勲パーティに行ける。  オリヴィアは頭を下げると、引き留める声を無視してさっさと着替えて宿を出ていったのであった。  男はまだ酒の影響で頭が痛むらしく、飛ぶように走るオリヴィアを捕まえることはできなかった。 *  今日はパーティがある。  東部の紛争を沈めたアシャー・コーンウォリス騎士の叙勲を祝うパーティである。彼の功績をたたえ、騎士の上の男爵位が贈られるのだ。
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