第7話

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第7話

 いつものように、彼女から誘いの手紙が届いたとき、セオドアは知らずほっと胸をなでおろした。  そしていつものように彼女を迎えに行くと、いつもの彼女がいて、セオドアはいつもの傲慢な態度に戻った。  彼女は頬を赤く染めている。セオドアに惚れているにちがいない。  馬車に乗り込むと、さっそくオリヴィアはセオドアに金を渡した。 「どうぞ。20カードゥです」 「……たしかに」  オリヴィアはそれっきり黙り込む。会話がないのはいつものことだ。オリヴィアはセオドアの前では口数が少ない。  彼女はめずらしく着飾っている。  紺色のドレスに、黒いレースのショール。年頃の貴族令嬢としては質素であるが、彼女の雰囲気によくあっている。  今日は珍しくセオドアが口を開いた。 「ずいぶんと羽振りがいいな?」 「母にもらいました」  20カードゥの出所を知りたくてそう言ったのだが、あっさりと答えられる。  なんだ、つまらないな、と思う。もっと苦しんでかき集めた金だったら面白いのに。 「結婚したら、あの母親はどうするんだ」 「地方に別宅があるので、そちらに行ってもらいます。そちらには母の友人も多いですし」
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