第1話

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 痛いくらいの沈黙がオリヴィアたちの間に落ちて、車軸がたてるぎしぎしという音だけが響いている。  馬車の窓の外は春らしく、小鳥が飛び、花が咲き誇っていた。  オリヴィアはこれでも婚約者なのだから、と思って一応言葉をかける。 「ずいぶん早く来られましたね」 「仕事はさっさと終わらせるに限る」  彼の「仕事」という言葉に複雑な気持ちを抱いていた時期もあったが、もはやこの関係が始まって1年。オリヴィアの中の乙女は死んでしまった。  彼が尋ねる。 「金は?」 「ここに」  オリヴィアはカバンから封筒を取り出し、彼に渡した。中には5カードゥが入っている。オリヴィアの月の小遣いの半分である。  彼は中身を確認した後、さらに言った。 「足りないぞ」 「え?」 「花束の代金だ」  さきほど渡された花束の代金の話をしているらしい。 「……ああ」  オリヴィアは肩を落とす。ごうつくばりの商人であっても、恋人に花を贈る日の花束代金を婚約者に請求などしないだろう。  しかし、オリヴィアは財布を開く。 「おいくらですか」 「1カードゥ」 「高すぎません?」
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