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第8話
泣いてわめいて、セオドアに赦しを乞えば面白いと思った。
しかし。
「……そうですか」
彼女はそう言っただけで、顔色ひとつ変えなかった。
――ほんとうに、つまらん女だ。
セオドアは肩をすくめた。
*
ということでやってきたパーティで、オリヴィアは壁の花を決め込んでいる。それもそうだろう。かの悪名高いセオドアと婚約した令嬢など、貴族社会ではいい噂のたねだ。
貴族たちはオリヴィアの一挙手一投足まで見て扇の裏に顔を隠す。
しかも、今日にいたってはセオドアと婚約破棄した公爵令嬢も来ている。彼女のまわりには寄らない方がいいだろう。
オリヴィアが慎重に動いている一方で、セオドアだけは悠々自適に動き回っている。
彼は元来能天気なのだろう。これほど悪意と好奇の視線が集まっているというのに、まったく気にするそぶりがない。
――それどころか、もう評判が回復してきているって思っているのよねー、彼……。
困ったものだ。いや、うらやましいものだ。その図太さをわけてほしいと思う。
オリヴィアもここに顔を出せるくらいには図太いのだが、本人は気が付いていない。
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