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オリヴィアはある程度の時間になれば、体調不良を訴えて帰るつもりだ。
セオドアの方はきっとパーティの最後までいるつもりだろうから、送りは期待できない。馬車を拾う必要があるだろう。貴族の令嬢が乗る馬車はだいたい1カードゥだ。
オリヴィアはため息をついた。
馬車に金、ドレスに金、今日来るだけで金。そして今度は結婚式で新郎を大人しくさせるのにも金だ。
――ほんとうに、金のかかる男……!
オリヴィアはいらいらしたが、それは顔に出さない。
――無駄無駄。イライラしちゃだめよ、私。気力の無駄、頭の無駄、そんなことよりどう稼ぐかを考えることにすべてを捧げるのよ。
オリヴィアは背筋を伸ばしてワイングラスを手に持った。すました顔の彼女の頭の中がまさか金勘定でいっぱいだとは誰にもわかるまい。
音楽隊が高らかに楽器を鳴らす。本日の主役であるアシャー・コーンウォリス男爵の登場である。
会場の大扉が開き、人々はいっせいにそちらに注目する。
「あ」
ばちっ。
そんな音さえ聞こえそうなほどだった。
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