第8話

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 入って来た人物と、オリヴィアの視線が合って、それからお互いに雷に打たれたようになった。  先に動いたのはアシャー・コーンウォリスだった。 「ちょっと来い」 「え……!」  オリヴィアは今日の主役に腕をひかれ、会場の外へと連れ出されたのだった。 *  走って、走って。  王宮の庭園の中を抜け、池を越え……。  オリヴィアは彼に呼びかけた。 「10カードゥさん」  その言葉に、ようやく男は足を止めて振り返る。 「アシャー・コーンウォリスだ」  その名前は、東部の紛争を沈めた騎士団長の名である。  オリヴィアは信じられない、と首を振る。 「……ほんとうに?」 「……あんたは……」  反対に名を尋ねられ、オリヴィアは目を泳がせた。 「いやー……名乗らないとだめですか」  彼は、オリヴィアが路上で私娼の真似事をしていたことを知っている。  本名をあかすと、結果的にオリヴィアの家名に泥を塗ることになるのではないかと彼女は恐れている。  しかし、男は一歩も引かない。 「名前は」 「うっ……オリヴィアです……」 「はぁー……グランヴィル男爵家か」
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