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「で? 俺の騎士団長の証を売り払って、その金を何に使ったんだ」
「ちょっと婚約者に……」
アシャーは目を丸くする。
「あんた、男に貢いでいるのか……」
「いやー……貢いでいると言うんでしょうか……その、いろいろと事情がですね」
「だよな。あんたの婚約者の方が金持ちだろう」
それは間違いない。
オリヴィアは黙った。アシャーにセオドアのことを言っても仕方がないと思った。
オリヴィアの世間がままならないものであることをよく理解している。
家が没落寸前であることも、セオドアと無理やり婚約させられたことも、セオドアと仲良くなれなかったことも、すべてオリヴィアひとりの力ではどうすることもできないのだ。
ままならない、仕方がない。
できるのは金を稼いで母を守ることだけだ。
オリヴィアは黙り込んだ。
王宮の外れまで出てきてしまっている。
あたりは暗く、遠くに王宮から漏れる光がぼんやりと見える。
今ごろ、アシャーが退席したことで会場は大騒ぎになっているかもしれない。
衆目の中、アシャーに手をひかれて会場を飛び出したオリヴィアは、戻ればまた好奇の目にさらされるのだろう。
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