第9話

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 もう慣れてしまっているが、それでも面倒は面倒だ。  いっそ、このまま体調不良ということにして帰ろうかな。  そんなことをとりとめもなく考えていたら、アシャーが口を開いた。 「俺は、誠意のつもりで指輪を渡したんだ」 「せいい」 「あんたに申し訳ないことをしたと思って」  アシャーの眉尻が下がる。  オリヴィアは一拍ののち、彼が言わんとすることを理解した。 「あの! その件ですが!」  勢いよく手をあげ、オリヴィアは力強く説明する。 「私たち! ほんとうに! なにもありませんでしたよ! あなたは酔っていましたし……起こそうとして水をかけて、それで風邪をひくとおもってシャツを脱がせただけです! 誓ってもいいです!」  ここだけは理解しておいてもらわなくてはならないだろう。  オリヴィアは私娼のまねごとをしただけで、実際にはいたしていないのだ。  オリヴィアの言葉を聞いて、アシャーは低く言った。 「じゃあ何か。あんたは俺から金を騙し取ったことになるな」 「そうなりますね」  オリヴィアはあっけらかんと答える。私娼か詐欺師なら、まだ詐欺師の方が、男爵令嬢としてはましな悪評だろう。
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