6人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
アシャーは頭を抱えた。
「悪徳令嬢め……」
「はは。間違いないですね」
「それで、俺の騎士団長の証を騙し取って、ドラ息子にくれてやったわけか?」
「ええーっと」
そう聞くと酷い話だ。
アシャーが指輪をはめ直す。
それを見ながら、オリヴィアはゆっくりと話しだした。
どうすることもできない話ではあるが、アシャーは知る権利があるだろうと思った。
婚約者であるセオドアとの関係がよくないこと、それを母が気にして心を病んでしまったこと、母のために仲のいいふりをすることにしたこと、そのためにセオドアに金を支払っていること、セオドアに値上げを宣言されたこと。
オリヴィアが話しているのを、男はじっと黙って聞いていた。
全部を聞き終わったあと、アシャーは言った。
「それは婚約者とは言わないだろう……」
「でも、婚約しているんですよ」
「……金のやり取りをする婚約者がどこにいる」
「でも、貴族の結婚ってお金ですよね?」
「当人同士で袋に金を入れて手渡しはしないだろう……」
そう言って、アシャーはまた頭を抱えた。
そして唸るように言う。
「あんた、変わってるってよく言われるだろ」
最初のコメントを投稿しよう!