第9話

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 アシャーは頭を抱えた。 「悪徳令嬢め……」 「はは。間違いないですね」 「それで、俺の騎士団長の証を騙し取って、ドラ息子にくれてやったわけか?」 「ええーっと」  そう聞くと酷い話だ。  アシャーが指輪をはめ直す。  それを見ながら、オリヴィアはゆっくりと話しだした。  どうすることもできない話ではあるが、アシャーは知る権利があるだろうと思った。  婚約者であるセオドアとの関係がよくないこと、それを母が気にして心を病んでしまったこと、母のために仲のいいふりをすることにしたこと、そのためにセオドアに金を支払っていること、セオドアに値上げを宣言されたこと。  オリヴィアが話しているのを、男はじっと黙って聞いていた。  全部を聞き終わったあと、アシャーは言った。 「それは婚約者とは言わないだろう……」 「でも、婚約しているんですよ」 「……金のやり取りをする婚約者がどこにいる」 「でも、貴族の結婚ってお金ですよね?」 「当人同士で袋に金を入れて手渡しはしないだろう……」  そう言って、アシャーはまた頭を抱えた。  そして唸るように言う。 「あんた、変わってるってよく言われるだろ」
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