第10話

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第10話

「言われないです。しっかり者だって言われます」 「そうか……」  近くから、衛兵の声が聞こえる。きっと、アシャーを探しに来たのだろう。  この密会もいよいよ終わりの時が近い。  オリヴィアは一歩下がった。  暗い闇の中で、男の傍に立っているのはまずいと思ったのだ。  しかし、距離をとったオリヴィアの腕をまた男は引いた。 「ちょっと……」  抗議の声にかぶせて、アシャーが問うた。 「それで、お前はどうなんだ」 「どう、といいますと」 「その婚約者のことが好きなのか?」 「え。大嫌いですけど」  アシャーは笑った。呆れたような、珍獣を見るような、それでいて、面白がるような。 「なら、お前はもう黙っていろ」 *  その後、オリヴィアの世界は目まぐるしく変わっていった。  アシャーはパーティに戻ると、国王に向かってこう言ったのだ。 「東部紛争を沈めた褒賞として、男爵令嬢オリヴィア・グランヴィルとの結婚の許可をいただきたい」  そのたった一言で、オリヴィアの世界は変わった。
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