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花なんて、露店で買えば3リン、立派な花屋で買ったとしてもせいぜい5リンだろう。
しかし、彼は請求額を下げる気は毛頭ないらしい。
オリヴィアはため息をついて、彼の要求通り1カードゥをさらに支払った。
仕方ない仕方ない。オリヴィアは自分に言い聞かせる。
なにせ「仲のいいふりをしてくれたら1日5カードゥ払います」と言い出したのはオリヴィアなのだから。
*
伯爵令息セオドア・ダウンゼンドは悪い男だ。
伯爵家の長男でありながら、その悪評はとどまることを知らない。
かつて、彼は公爵令嬢オーロラ・オズボーンと婚約していたが、パン屋の娘であるアイラに一目惚れをした。彼はアイラと結婚するためにオーロラ嬢との婚約破棄を画策した。
そのやり方は単純で、オーロラ嬢にアイラの暗殺事件首謀者の濡れ衣を着せて糾弾するというものであった。
無論、暗殺事件というのはセオドアとアイラの自作自演であり、そんな三文芝居にまわりの大人がだまされるはずもなく、結局オーロラ嬢との婚約は破棄、アイラは遠方の修道院預かり、セオドアは伯爵家の継承権を失うこととなった。
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