第1話

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 そんなセオドアの次の婚約者として引きずり出されてきたのがオリヴィア・グランヴィルである。茶色い髪に茶色い瞳、どこにでもいる、秀でたところのない男爵令嬢だ。  婚約に至った理由は三つある。  伯爵家は次々と問題を起こすセオドアをさっさとどこかに追い出したかったから。  男爵家は家督を継承できる男子が生まれなかったため、婿養子を探していたから。  没落寸前の家計を伯爵家が援助すると約束してくれたから。  このように、見事に利害が一致してしまったのだ。  どこからどう見ても利害のための結婚であるが、オリヴィアはセオドアとよい関係を築こうと努力をした。しかし、セオドアはその努力をことごとく無下にした。  彼は手紙に返事もしないし、ようやく逢瀬の約束をとりつけてもすっぽかす。オリヴィアの誕生日を覚えてもいないし、オリヴィアの贈った誕生日プレゼントは送り返してきた。とどめに、オリヴィアがクッキーを焼いて彼に渡したら、彼は目の前でそれを犬に食べさせた。  オリヴィアはそうそうに音を上げた。いくら望まぬ婚約だからといって、このような扱いを受けるのは不当だ。オリヴィアたちの仲は急速に悪化した。
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