第一話

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第一話

 見た目は清楚だとよく言われる。  サラダをちまちま食べてお腹いっぱいになりそうなキャラだと。  そんなわけない。  足りるわけない。  あたしが1日のうち、一番楽しみにしているのは、ご飯の時間なのだ。  湯気が立つ、ほっかほかのモーニングブレッドを半分にちぎってー、ぶ厚目にスライスしてもらったベーコンをドーン!   その上にとろとろのスクランブルエッグをデーン!   そんでもって、ブラックペッパーを少量挽きましてー!  はい! 後は口に放り込むだけ! 「リア・フローレンスか?」  出来た影に、あたしは顔を上げた。 「はぁ」  不機嫌丸出しの声が出る。ひとが今から食事しますってときに声かけるとか、無粋すぎません? 「本人で間違いないか?」 「はぁ」  顔を上げた。  男はあたしを見据えている。  小刻みに手が震えている。  おまけにいきなり涙目になっている。  一体、なんなの。  男に睨まれたくらいで、怯えたり怯んだりすることはないが。 「ほんとに?」 「しつこいな。本人ですよ。なに?」  当然素っ気ない態度だ。  返事を返す分、有り難いと思ってほしい。 「そうか」  男は深々とため息を吐いた。  ほー。  おお、びっくり。  ちゃんと見て、思わず見惚れた。  この男、やたら綺麗な顔と良い体躯をしている。  黒髪の短髪に、青色の瞳。  白い肩当てをした軍人姿だ。  背は高く、鍛えられているのが服の上からわかる身体つき。  声は、適度に低く、いい声である。  無骨な物言いと感じだが、まぁ老若男女にウケそうなタイプだ。  
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