第十二話

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第十二話

 「ーーそれ、あたしの!」  ごちん。  イタタタタ。  あたしが目を開けると、額を押さえているリオンがいた。 「食い気しかないのか」  肩を震わせながら彼は言う。 「だって、骨付き肉だったのよ、ってどこ?」 「宿屋」 「は? もう?」  計算ではあと一日以上かかるはず。  ピーと枕元で鳴き声がした。  雛がちょこんと座っている。  鶏ともう1匹の雛はソファで丸まって寝ている。  大変可愛い。 「ついてきちゃったの?」 「川から上がったら親鶏がいてな、背中に乗せて運んでくれた。  ホントは、随分小さいんだな。普通のニワトリサイズなんて」 「魔術で変化してたのかも」 「そっか」  あたしは何気なく自分の服を見た。  可愛らしいピンクのワンピースだが、あたしの趣味ではない。 「なんで!」 「着替えさせたのはキシカワさんだ」  彼は少し赤くなりながら言い返す。 「とても、似合っている」  唐突に褒められる。  急だ。  なんだかよくわからないが、好意を抱かれている。  髪に触れ、優しく何度も撫でられる。  間違いなく、好意を感じる。 「え、ああ、うん」  彼は、あたしを見つめて微笑んだ。  顔が少し赤い。 「リア、あなたはとても可愛くて、素敵だ」 「あ、ありがと」  そっと顎に手をかけられる。 「唇に触れていい?」  律儀に聞かれると恥ずかしい。  あたしは、軽く頷く。  目を閉じて彼の唇を待つ。 「ーーは」  唇が離れ息を吐く。  自分の息が熱い。  頬が熱い。 「すごく、可愛い」  彼は、あたしの唇を指でなぞり、笑む。  そして、抱きしめる。 「ちゃんと護れた」  彼は、確認するように軽く力を込めた。 「ありがとう」 「うん」  互いに無事で帰ってこれた。  あたしは、彼の腰を軽く叩く。 「レオン、下でご飯を食べましょ」 「ああ、わかった」  額にキスをして、彼は身体を離す。 「ひとつお願いがあるの」
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