第十五話

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第十五話

 結局、マクレガーさんは、殺ウヌリン罪と、殺未遂罪、国家転覆罪で逮捕された。  生きている間に世俗に出てくることはないだろう。  襲われた評論家は、犯罪を起こさせてしまうような行き過ぎた文章を書いたと廃業を余儀なくされ、宿は人の手に渡り、再建されることになった。 「魔石、レオンが持ってるの?」  ヤマカワさんの墓の前で手を合わせると、彼はポケットから魔石を取り出し、空にかざす。 「俺は、奥さんに渡そうとしたんだけれど、俺のこと自分の子供みたいに思ってたから、どうか一緒にいてほしいって」 「そう……」  あたしたちは、一礼し、墓地を後にする。 「これからのことなんだけど、中央政府から依頼が入ってね」 「うん」 「マクレガーさんのように違法加工した武器の売買が他にないか、自然発生の魔石は本当なのか調査してほしいって。  当分は留まるつもり」 「そうか」  彼は、嬉しそうに笑った。 「家はどうするんだ? 宿を借りるのでは金がかかるだろう」 「まぁ、長期滞在の宿もあるし」 「一緒に暮らさないか?」 「へ?」  後ろで、バキンと枝が折れる音がした。  キシカワさんは、今日も元気にストーカーに励んでいる。 「そうすれば、もっと互いのことを知れる」 「う、うん」 「大好きなリアの近くにいたい」  彼は、あたしの髪を撫でた。 「まずは、恋人として、揃いのものがほしいんだが」 「うん」  アクセサリーとかかな。 「俺とお揃いの名字はどうかな?」  あたしは提案に吹き出した。 「気が早すぎる!」  レオンは目に見えてシュンとした。 「俺は、心配なんだよ」  そう言ってごちる。  すごモテするくせに、なにを心配しているのやら。  あたしは、耳につけているイヤリングを取り、彼の左耳につける。 「まずは、これくらいからじゃない?」  彼は、手を取り、指を絡めると「ありがとう」と耳元で囁いた。  心臓がどきりと高鳴る。 「今ので、少しは、気持ちの温度は上がった?」  あたしは、お返しに背伸びしてレオンの髪に唇を落とす。 「あなたは?」  ドキドキするのかさせるのか、これからもレオンとの甘い攻防は続きそうだ。 ーー了。
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