第七話

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第七話

 暗殺者の攻撃は当然ながらしつこかった。  底無し沼、発火による爆発、落とし穴などなど。  あの手この手で襲撃される。  「つ、ついた」  街を出立して、3日後洞窟の入口に辿り着いた。  よく命があるものだ。  突発的に襲われるため、不眠不休になってしまい、魔物と戦う前から、くったくたに疲れている。  疲労困憊だ。  底無し沼からあたしを引き戻し、爆発から身を挺して庇い、落とし穴に代わりに落ち、途中あたしを背負いながら歩き、駆け、をした隣のレオンはケロッとしていて、あたしひとりぐったりしている。 「大丈夫か?」  彼は、大丈夫だと大丈夫か? を交互に口にしてきた。 「どう見える?」  レオンは、洞窟に歩を進め、しばらく行くと、突然立ち止まった。 「ここで突然襲われるとは考えにくい」 「ま、そうね」  道が1本だからだ。暗殺者が先回りしているということも考えにくい。  うっかり魔物と遭遇するような危険は犯さないだろう。  彼は、座り洞窟の壁にもたれかかる。 「膝を貸すから、休め」  そう言って、座り、曲げた膝を叩く。  あたしは素直に従い横になる。  その頭を撫でられる。 「恐い目に合わせてすまない」  死にかける度に彼は身体を張りあたしを護ってくれていた。 「……別に。  こんな仕事してると死にかけることはよくある」  あたしはそう言って強がる。  涙をぐっと堪えた。  死ぬかもしれないという緊張感で思った以上に気持ちに負荷がかかっている。 「死にかけるのと、殺されそうになることが続く、は全然違うだろう」  穏やかな声に、胸が苦しくなる。  彼は、私の手を握り、それから包んだ。  震えているのに気付いたんだろう。  泣き言を言うタイプではないから、言葉を飲み込んで、鼻をすする。 「ごめんな」  別に彼が悪いわけではない。  背を撫でられるうちに身体がじんわり熱くなり、うとうととしだして、身体が一気に重くなる。  大丈夫だよ、と、そう耳元でささやかれた声を最後にあたしの意識は途切れた。
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