第八話

1/1
前へ
/15ページ
次へ

第八話

 頬に水が当たり、目が覚める。  洞窟の中なので、時間ははっきりしない。  身体を起こし、背伸びをする。  頭がすっきりしている。  レオンは軽く身じろぎした。  とりあえず生きてる。  あたしは、ほっと息を吐いた。  この感じであれば、今日中に、討伐に迎えるだろう。  そもそも大きな洞窟ではない。 「聞いてもいいか?」 「あ、おはよ」 「おはよう」 「なにを聞きたい?」 「君のこと」  唐突な質問である。 「武勇伝?」 「それでもいいけど、好きなものとか好きなこと、教えて」  なぜ。  今から魔物討伐に行くというのによくわからない。  今までどんな魔物を倒してきたのかとかそういう話ならわかるが。  まぁ、いいや。 「好きなものは食べ歩き。  好きなことはお祭りの大食い大会に出ること」 「そーいや、一昨日の祭りのミートパイの大食い大会で優勝してたね、頬パンパンにして、ハムスターみたいだった」  彼は思い出したようで楽しそうに笑った。 「なんで知って」 「会場の警備をしてたから」 「あっそ」 「可愛いと思った」 「ぇ」  ふっと笑う。  可愛いという言葉に不覚にもときめいた。  彼は肩を落とす。 「まさか、君が容疑者だなんて」 「まだ言うか」  あたしは苦笑いした。 「大丈夫みたいだな」  彼は、あたしの目を見て笑った。  あれはあれ、それはそれ。 「大丈夫よ!  しっかり見てなさいよ、あたしが犯人でないというところ」  そう言って、立ち上がる。 「行こう」  まずは、魔物の件が先だ。  片付けたら、暗殺者を迎え撃つことも考えよう。  姿が見えない敵は苦手だが、見える魔物は問題ない。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加