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ざらりとした
飲みすぎた、頭が痛い、布団やわらかい、なんかもふもふする……笹生夏也はいつもと違う感触の枕に気づき、目が覚めた。土曜日の朝、会社は休みなのでいつもはのんびりしているが、今日はそういうわけには行かなかった。
知らないベッドでの目覚めだったからだ。
「――へっ?!」
がばっと起き上がると、笹生の丸眼鏡がベッドサイドに置かれているのが目に留まった。
視界が戻ると、笹生のすぐ隣にグレーの猫が丸まっているのに気づいた。勿論笹生は猫を飼っていない。ここはどこだろうかと混乱しながら、そっと猫を撫でてみる。
熟睡しているのか、知らない人間の手にも起きる気配はない。
――はっ俺昨日……捷吾さんと飲みに行ってそのまま……?!
猫を飼っていると言っていた気がする。そして何故か自宅にお持ち帰りされてしまい、朝を迎えている。――何故か猫と。
「えっ? 捷……冬木さん……?」
視線をあちこちに向けてみるが、部屋の主はどこにも見当たらない。さっぱりとした部屋は、冬木の人物像と合致しており整理整頓されている。本棚の本はジャンル別、サイズ別に並べられており几帳面さが伺える。遮光カーテンが締められている為に、外光はほとんど入ってこなかった。
グレーの猫がいつのまにか目を覚まし、笹生の手をざらりと舐めた。
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