まさか…

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まさか…

 ――僕の舌が性的に見えたのであればそれは、僕が君の皮膚を舐めるのを想像したからではないですか?  ふと昨夜言われた冬木の言葉が脳内で再生される。 「ま、まさか……」  笹生は猫をじっと見る。美しい猫だ。まるで冬木捷吾という男を猫化したかのような…… 「冬木さん!? 本当は猫だったんですか……?」 「朝から何を馬鹿なことを叫んでいるんですか、夏也くん」  部屋のドアが静かに開いて、苦笑いを含んだ声がした。振り向くと冬木が立っていた。風呂を使っていたのか、濡髪に部屋着という非常にプライベートな姿だ。笹生は悶絶しながら心のカメラでシャッターを何度も押す。  ――推しの風呂上がり! 「僕は猫ではありませんよ。そこは間違えないでください。――昨夜のことをどこまで覚えていますか」  冬木は意味ありげにベッドまで歩いてくると、笹生のすぐ傍に腰掛けた。ぎしりと体重がかかり、ベッドが沈んだ。 「――ど、こまで?」 「僕の猫になりたいと、君は言いましたよ」  確かに、猫を飼っていると聞かされて冬木に飼われる猫を羨んだ。しかし口に出しただろうか。酔っ払っていてよく覚えていない。
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