血の誓いをたてると言うこと

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血の誓いをたてると言うこと

「シャーリィは、ロードと血の契約を結んだのか」 やはり、気になるのはそこよね。ヴァンパイアと血の契約を結ぶと言うことは、伴侶となるヴァンパイアと寿命を同じくすること。 そしてロードの血筋はヴァンパイアの中でも始祖に近いからこそ他のヴァンパイアよりも長命なのだ。だから私はあと何百年かはこのままの姿で、いずれはお父さまも見送ることとなる。 一度目の結婚の時とはやはり規模が変わってしまったが、元々はヴァンパイアと結婚する時にお父さまも分かっていたこととはいえ……やはり娘に問いたくはなるわよね。 「お父さま、私はアッシュとは血の契約を結んでいないから、ロシェと血の契約を結んだの」 そう告げれば、お父さまはどこかホッとしたように息を吐いた。それは、私がアッシュと血の契約を結んでいないことに対してなのか、それともロシェと血の契約を結んだことに対してなのか。 ……どちらもかしら。 私は……ロシェをひとりにはできないもの。どうしてか、してはいけない気もしたし、私もロシェと長く一緒にいたいと願うから。 しかし、その時。 「血の契約ではない。誓いだ」 そう告げたのはロシェだ。 「そうね……誓いね」 そう言えばそうだった。私たちは契約じゃないから。 「最近のヴァンパイアではそう称するのか」 「うん……どうかしら」 「多分そうなる」 ロシェの方を向けば、そんな答えが返ってくる。ロードがそう告げるのならば、今後はそうなっていきそうよね。 「そうか……契約ではなく」 私たちの勘違い騒動は知らないはずだけど、お父さまはどうしてか嬉しそうに微笑んだ。 「それで……シャーリィ、お前も何か聞きたいことがあったんじゃないのか?」 「……それは……っ」 お父さまが聞きたかったことは、血の誓いについてよね。次は……私の番か。 「ロザリア・ガーネットのことを聞きたいの」 「……それか。シャーリィは昔、とても興味を持っていたな」 「それは……うん」 やっぱり前世日本人の感覚からすると魔女って聞くと心が踊るのよ。いつしかロザリア・ガーネットの話題は公爵家の中から出なくなって、私もお父さまから外では言わないようにと諭された。 それは紛れもなくこの世界での魔女の見解のせいなのだが、幼い頃の私はそれが理解できなかったから、お父さまは仕方がなくその話題を出すのをやめたのよね。 「ロザリア・ガーネットは魔女であることは間違いない。そして遠い昔に、ヴァンパイアロードと取り引きをした女性だ」 ヴァンパイアロードと……!?それはいつのヴァンパイアロードなのだろうか……? 「出自については謎も多いのだが、その昔天災で領地運営が危うくなった際に、ヴァンパイアロードと取り引きをして、大金をもらって領地が飢えないよう尽力したと言うとんでもないことをやらかした」 いや……ヴァンパイアロードから大金をもらったって……一体何をして儲けたのよ……。まさかきな臭いことではないわよね……? 「けれど、どうやって」 「それは……残念ながら伝わっていないが、一説には彼女は予知を行っていた」 予知……。魔女とは呪術を司ると言う。呪術を応用して予知を行っていたと言うことだろうか。 「それゆえに彼女は魔女と呼ばれたが、さまざまな危機を乗り越える知恵を授けたのは事実だ。そして……」 「……お父さま?」 お父さまは少々躊躇いがちに口を開く。 「一時はハンター協会にも身を置いていたようだ」 ハンター協会ともかかわりがあったの……!?貴族で魔女でハンター協会とも繋がりって……一体どんな方だったのかしら。 「そして、これは直系にしか伝わっていないことだが……」 直系にしか……お父さまには私以外に子はいない。本来は私に婿を取らせるつもりが、アイリーナのせいで嫁に行く嵌めになってしまったから、私には継承されなかったのね。 「ヴァンパイアロードには恩があるから、その時は遠慮せずに恩を返すようにと。その時がくれば分かると」 ヴァンパイアロードからもらった大金で領地を救えたからってこと……? 「その時がくればって……私に教えても良かったの……?」 一子相伝の予言なのでは。 「多分その時は今だ」 「……え」 「娘が嫁に行ってしまうのは父親として複雑な気分だが、彼女が残した言葉通り……何となく分かる」 つまりは私とロシェの婚姻を認めるのが……恩返しってことなの……? そしてお父さまはロシェをじっと見つめる。 ロシェもヴァンパイアロードではあるが、彼女が恩を借りたロードとは、どのロードのことであったのか。 「……恩……やはりあの女の言うことはよく分からない」 そう言ってロシェはそっと顔を背けてしまう。 ロシェもロザリアを知っているの……?しかし……。 「ロシェ、まさか大金を払ったロードってあなた!?ロザリアは一体何をして大金を……」 「もう済んだことだ」 そう言うとロシェは私の方をパッと向き、いつもの懐っこい笑みを浮かべる。 「私が愛しているのは、シャーリィひとりなのだから、問題ない」 あれ……今私の愛称を……。 「ダメか?」 それは私の愛称呼びのことよね……?お父さまの前でも見せつけようとするんだから。 「特別よ。お父さまのほかには、あなただけの特別だから」 そう告げれば、お父さまがゆっくりと微笑を漏らす。
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