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そして1年生を終えた私たちは、2年生に上がりクラスが分かれた。
それが、転機といえば転機だった。
「あ、紫青」
「おう」
廊下で会えば言葉を交わして、相変わらず登下校は一緒。
クラスは離れても、ともに過ごす時間は減っても、私たちのペースでつきあっていけると思っていた。
でもいざ離れてみると、今まで見えていなかったものが見えてくる。
例えば、私の前と友達の前で見せる彼の笑顔の違い。
例えば、彼からの連絡やお誘いの頻度。
例えば、彼の瞳が本当は誰を見つめていたのか、とか。
友達の前では屈託なく零れる笑顔も、私に向ける笑顔は常に凪いだ海のような穏やかさ。
同じクラスの時はいつも一緒だったから錯覚していたけど、彼から私に会いに来てはくれない。
ふ、と校内で紫青を見かけた時、交わらない視線の先を追いかけてしまう。
その先にいるのは、いつも同じ女。
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