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1学年上の先輩なのだ、とは噂好きのクラスメイトから聞いた。
ずっとつきあっていた彼氏がいたけれど、この春に別れてしまったのだとも。
もうそれだけでただの嫌な予感だったものは確信へと変わって、だけど、どうすることもできなかった。
問いつめることも、聞かなかったことにするのも。
ずるずるとつきあい続けて、それでもずっと変わらない態度でいることが難しくて、それが苦しくなっていた。
そしてそれは当然、紫青にも伝わってしまう。
「陽花、最近どうかした?」
紫青からそう切り出したのは、季節が一周して私たちの恋が始まった雨の季節に入った頃のことだった。
息を、呑んだ。
しとしとと降る雨のせいで、傘に隠れた紫青の表情は見えない。
のらりくらりと避け続けてきた問題に、ついに審判が下されるのかと震えた。
きっと紫青も分かっている。
今日が私たちの、最後の日。
何も答えることができないまま、私たちは無言で歩き続けた。
足取りは、雨に絡め取られたように重い。
雨足は、強くなる一方。
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