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……――その日は数日に渡って降り続けていた雨がようやく止んで、夕方には雲間から覗いた太陽が、濡れた路面や草木をキラキラと照らしていた。
「三好さん、またね」
帰り際に上村くんがくれた笑顔と重なって、馬鹿みたいにドキドキと胸が鳴った。
私の心にも、一筋の光が差し込んだみたいだった。
☂︎
何度か一緒に帰ることが続いて、最初の頃は傘を並べて歩いていた道のりも、そのうち触れそうな距離で肩を並べて歩くようになった。
梅雨の季節が終わる頃には、私たちの距離は急速に近づいておつきあいが始まった。
友達も多く明るいタイプなのに、意外にも上村くんは恋愛には疎くてなかなか気持ちを言葉にしてくれることはなかったけど、確かに好きでいてくれた。
告白らしい告白もなくて、自然と繋がった手をきっかけに動き出した私たちの恋。
探り探りの恋をゆっくりと育んで、久しぶりの雨の日。
雨音にかき消えるくらいの小さな声で、
「好きだよ」
そう、不器用に伝えてくれた。
そんな彼のことが、大好きだった。
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