突然の選択

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突然の選択

人は突然に選択を迫られることがある。 今の私がそうだ。 目の前のコップの水。 これを飲んでいいのか悪いのか。 水は別に腐ってはいない。 どちらかと言うと新鮮だ。 単なる水道水なので、味は評価の対象外。 コップに注いで30分くらい経った。 肝心なことだが、私は30分程度うたた寝していた。 直面してる問題は、寝起きにこれを飲んでいいのかどうか。 水道水で、味は評価外、注いでから30分経過。普通なら躊躇わず飲むだろう。 が、コップの底にあるものが私を悩ませる。 黒い粒状のものが沈んでいるのだ。 これは一体何だろう。 仮説1。 これはゴマだ。 朝イチでおにぎりを食べた。具材はなかったのでゴマ塩で握った。 ゴマなら飲んでも平気だし、消化はされないらしいが、健康に害はない。 仮説2。 これは虫の卵だ。 うたた寝していたとき、窓は全開だった。 水に卵を産みつける虫はいる。 そうだった場合、飲んだらどうなるの。 私は腹の中で虫が孵化する想像をしてしまった。 怖い。怖い。虫の卵を飲む。ホラー映画も顔負けじゃん。 仮説3。 これはゴミだ。 朝から掃除をしていた。 知らないうちにゴミが舞い上がり、コップにホールインワン。ありえなくはない。 このぐらいの大きさなら飲んでも問題はなさそうだが、衛生面を考えると喜んで飲むものでもない。 虫の卵よりはマシだけど。 以上の仮説があれば、正答はコップをゆすいで新しい水を入れるになるだろう。 だけど私がうたた寝してる間に、なんと愛猫が膝の上で寝てくれた。 私の愛猫はとても怒りやすく、私は下僕である。 猫様が膝で寝てくださっているのに、下僕が動くのはありえない。 ツン99%、デレ1%のツンデレ様に対して、一緒に暮らしていただいている私のような人間ごときが眠りを妨げるのは無理な話である。 ところが私は寝起きで喉が乾いていて、湿らせるだけでも水が飲みたい。 目の前には水の入ったコップ。 手が届くところに水分はない。
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