自堕落貴族奮闘記

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―――・・・まぁいい、先に早くルーファスを探さないと。 とりあえずルーファス探しを再開するためこの場から離れようと思ったのだが、次期王の候補が全員脱落したということで民衆が騒ぎ始めていた。 もちろん選挙にはブレイドとルーファス、オズ以外にも候補はいる。 ただあまりにも中心人物たちとは格差があり票が全く集まっていなかった。 「仕方ないがそちらに投票するしかないのか?」 「そんな消去法で王を選べと!? もしそうするならもっと相応しい人がいるだろう」 「いや、寧ろ俺が王になった方がいい!」 「いやいや、それはないない!!」 騒ぎが少しずつ大きくなっていき騒動にまで発展しかけていた。 ―――おいおい、国民同士が争うなんてそんな・・・。 次第にモノを投げてくる人が減り皆その騒ぎに加勢していく。 オズも混乱状態の中ある声が上がった。 「成績の入れ替えがなかったのならルーファス様が王になればいいのではないか?」 「おぉ、確かにその通りだ!」 「元々ルーファス様が下馬評一位だったわけだし、それでいいじゃないか!!」 「だけどルーファス様が王になったら俺たち庶民はこの国から追い出されてしまうんじゃ・・・」 「他の候補が王になるよりその方がまだマシだ。 ルーファス様がそう決めたのなら素直に従おう」 ―――いや、その結果だと今と何も変わらない。 それはオズにとっては都合がよくない。 元々庶民のロイと今まで通りの生活をと思ってここまでやってきたのに、その全てが無駄になってしまう。 辺りを見渡しているとようやくルーファスの後ろ姿を発見した。 のだが、一緒にいる相手を見て驚くことになった。 「ルーファス!! ・・・と、ロイ?」 オズの経験上二人が交流しているところなんて一度も見たことがなかった。 なのに何故か二人は一緒にいる。 しかも傍目にも親密そうに話しているのだ。 「あの二人って接点があったか? どういうことなんだ、一体・・・。 あれ、その箱は」 二人の傍には侵入した時にロイが持っていたのと同じ箱が三つ置かれていた。 ―――あれって確か音を消す機械とか言っていなかったか・・・? 音を消す機械だと聞かされていたがどうも様子がおかしい。 箱からは光が伸びていてそれがブレイドの密談や王の暴走、オズの侵入などの映像を映し出していた。 「どういうことだ・・・」 「ようやくここまで辿り着いたのかい、兄さん」 二人に近付くとルーファスとロイはオズの方を向いた。 「いや、どうしてそんなに落ち着いていられるんだよ。 計画が全て失敗したんだぞ? もうこんなになってしまったら今更どうにもできない」 「確かにどうにもできないね」 「全てルーファスの計画通りに事を進めてきたのに、本当にこれでいいのか? それにどうしてロイはここに・・・」 「これじゃあどうしようもないからこれはもう僕が王になるしかない」 「あぁ。 ・・・え、待て、はぁッ!?」 チラリとロイを見ている隙にルーファスは広場の壇上へと登っていった。 「おい、何を言ってんだ!! 王になりたくないから綿密に計画を練ってきたんだろ!?」 そのようなオズの言葉は無視しルーファスはスピーチを始めた。 「皆さん、聞いてください!! 国の運営において最も大切なことは全国民が納得することです!!」 ルーファスの声に騒ぎは一度静まった。 国民は皆ルーファスに注目している。 「ブレイドは不祥事を起こしていた! 僕の兄は元々王の器ではない! そして王は実の父であり恥ずかしいことですが既におかしくなっていた!!」 オズは言っている意味がよく分からず首を傾げる。 「ルーファス、何を言って・・・」 「そんな彼らに王をやらせては国が滅んでしまう! ならどうするべきか聡明な皆さんなら既に分かっていることでしょう?」 ―――は、はぁ!? ―――俺がトップになれとルーファスが言ったくせに!! 「貴族も庶民も僕に投票してください! 投票が固まれば僕の言葉は絶対のものになる!!」 その言葉に民衆は過熱し投票が始まるとその票のほぼ全てがルーファスに集まってしまった。 「凄いよね、ルーファス様」 「は?」 その言葉にロイを見た。 「ここまで計画通りに進むなんて思いもよらなかった」 「計画? いや、計画は失敗したはず・・・。 というかどうしてロイが計画のことを知って」 「これを見てよ。 一ヶ月前に書かれたものだ」 そう言いながらロイから手渡された紙には詳細にこれまでの出来事が書かれていた。 そこにはオズが王の部屋へ乗り込み王が乱心することまで書かれていた。 ―――これが予言じゃなくて本当に計画!? その紙を見て驚いているうちにルーファスがスピーチを終え戻ってきた。 「兄さん、本当に感謝するよ」 「感謝って、これは一体・・・」 「兄さんは怠惰な人間だったのかもしれないけど性根は真っすぐな人だって僕は分かっていた。 だから計画通りに進めることができたんだ」 「最初から二人は協力していたのか?」 「そう。 兄さんに上手く動いてもらうにはロイの協力が必要不可欠だったからね」 その言葉にロイを軽く睨み付ける。 「まぁ最初は兄さんを裏切るようなことになるから、ってかなり渋っていたんだけど。 これがこの国の未来に繋がることを理解してもらって動いてもらったんだ」 ロイは小さく頭を下げた。 「でもルーファスが王になったら庶民を追い出すことになるんじゃ」 「それは大丈夫。 僕が本当の平等な世界を作るよ」
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