自堕落貴族奮闘記

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朝となりすっかり雨は上がっていた。 侵入の前に仮眠を取っていたが夜の間起きていたため多少眠い。 とはいえ眠そうにしているわけにもいかず、屋敷へと戻ったオズが顔を洗い終えたところで偶然玄関でルーファスの姿を見かけた。 ―――雨は上がってちゃっかり虹まで出ちゃったりして。 ―――誰に光が当たるんだか。 今日が選挙当日ということでルーファスは一層気合いを入れ演説を行おうとしていた。 「ルーファス様、今日も頑張ってくださいね。 代々受け継がれていることをこのまま行い、いい国にしていきましょう」 「うん、分かってる」 メイドに上着を着させられながらルーファスは頷いた。 そこでルーファスはオズの存在に気が付いた。 「・・・兄さん」 「何だよ、俺に話しかけんな。 俺とお前は軽々しく挨拶を交わすような間柄じゃないはずだ」 「止めてよ、公衆の面前で」 「黙れ。 誰だって俺たちの関係は知っていることだ。 それにここは公衆の面前ではないだろ」 「・・・」 オズはこの場から離れた。 ルーファスは何も言わずに外へ出る。 ―――・・・まぁどうなるのか気になるし俺も早めに向かうか。 遅れて演説会場へと到着。 オズは近くの脇で隠れながら様子を窺っていた。 するとルーファスの前に一番のライバルであるブレイドが現れた。 ブレイドは選挙でのルーファスの対立候補である。 普段から仲がいいわけでもなく、家同士の関係も悪い。 二人が出会えば談笑などが起こるはずもなく、ブレイドは威嚇するような口調でルーファスに絡む。 「まだ諦めないのか?」 「諦めるってどの口が言うのか。 事前調査の結果を見ていないの? このままいけば僕が圧倒的大差で勝つ。 元々王の血筋である僕に勝てるはずがないんだ」 そう言い放ったルーファスの正面にブレイドは移動した。 「お前たちのやり方は間違っている! それを正すために俺は次期トップにならなければならないんだ」 「まるで自分自身に言い聞かせているみたいだね」 「黙れ! その冷めた顔を見ているだけで苛立ってくる。 人間の心を失ってしまったから庶民を追い出すなんて発想ができるんだ!!」 「・・・」 「貴族だけの国にして何がいいっていうんだ? これから生まれる人間はまだしもこの国で生まれこの国で育った国民のことを考えろ!!」 「もし百歩譲って君の言うことが正しいとしても、君では僕に選挙で勝てない。 選挙というものがどういうものか君もよく分かっているだろう?  票田を多く抱えているウチの家系に勝つのは並大抵のことでは無理だ。 もちろん僕が余程の不祥事でも犯せばひっくり返るかもしれないけどね」 その会話はオズにも聞こえていた。 オズの家系はいつもトップを取っておりこの国から庶民を追い出そうとしている。 貴族だけの国にし輝かしい国として見られたいのが目的だ。 そのため庶民が不利になるような制度にしたり、学校を貴族と庶民を混合にして居にくさを味わわせ自ら去るように促している。 それを阻止するためにブレイドが現れたのだ。 ルーファスは鋭い目つきでブレイドを見た。 「・・・それに、こっちも言わせてもらうけど君がしようとしているのはただの現状維持、だよね?」 「はぁ?」 「自分の意思はそこになく、ただただ変化を恐れている。 貴族は肥え庶民は飢える。 そんな国が君の望みなのか?」 「そ、そういうもんだろ。 貴族は貴族、庶民は庶民。 今までそれで上手くやってきたじゃないか!」 言い合っている間に演説の時間となってしまった。 各々大人しくなり最後の演説をし始める。 彼らの演説をオズはボーっと聞いていた。 ―――学校で出会ったロイは庶民だ。 ―――大切な親友をこの国から追い出したくなんかない。 ―――でもこのままだと圧倒的な差でルーファスが勝つ。 ―――それをどうにかしてでも阻止しなければ・・・。 庶民は当然ブレイドに票を入れたいが、威圧的な貴族を見て票を入れるのを躊躇っている。 その状態が続いていたが今日で決着がつくのだ。 ―――何としてでも庶民の票をルーファスに入れさせないようにしないとな。 貴族と庶民が持つ票は大体半々である。 貴族がルーファス、庶民がブレイドと投票すれば拮抗するが現実はそうもいかない。 現在は8割程の得票をルーファスが見込んでいる。 ブレイドもそれが分かっているのか演説からは必死さが窺えた。 そのような中ブレイド家の者が慌てた表情で割って入ってきた。 「大変です、大変です!! 坊ちゃん、皆さん、これを見てください!!」 「おい、何演説中に勝手に・・・」 ブレイドは止めに入ったが配られたチラシを見て言葉を飲み込んだ。 「何だよ、これ・・・。 これは事実なのか・・・?」 そこには早朝にオズがブレイド家へ侵入し与えた情報が書かれていた。 ルーファスの学歴に明らかな偽りがあったことがブレイド家が実際に調査したところ真実だと判明したのだ。 ルーファスもそのチラシを見て何も言葉が出なくなっていた。
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