自堕落貴族奮闘記

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国民がざわついている中表情を変えない者が一人いた。 オズからしてみれば昨日から予想していた展開。 もっとも選挙演説中に割り込んでくるとまでは思っていなかった。 だが逆に言うならこのタイミングは暴露に最適だと言える。 もしかしたらブレイド側がそれを見計らっていたのかもしれない。 ―――俺とルーファスの全ての情報を入れ替えておいてよかった。 オズとしてはただただ狙い通りの光景に思わず笑みが零れそうになる。 公聴していた民衆の空気も明らかに変わっていた。 「これって本当なの・・・? あのルーファス様が?」 「あのブレイド家がそう言っているんだぞ? 信頼できる家系だし嘘は言わないだろ」 「でもブレイド家は正直今回の選挙も不利だった。 だからルーファス家を落とすために嘘を言っている可能性も・・・」 「・・・あ、オズ様だ! オズ様もここにいるぞ!!」 周りにいる人が渦中の人の内の一人であるオズの存在に気付いた。 一斉に人が集まってくる。 「オズ様、これって本当なんですか!?」 遠くにいる住民も皆こちらを注目していた。 「兄さん・・・」 その騒ぎに気付いたのかルーファスも近付いてくる。 住民はオズの前を開けルーファスが通れるようにした。 「兄さん、これは一体どういう・・・」 「ルーファス、もう観念するしかない。 ここで話してスッキリさせた方がいい」 「でも・・・」 「もう証拠があるんだから隠しようがないだろ。 みんな! あれは事実なんだ!!」 「「「なんと・・・ッ!?」」」 キッパリと告げると周りからは驚きの声が上がった。 「オズ様がそう仰っているしルーファス様も否定しないから間違いない!」 「あぁ、ライバルであるブレイド家と手を組むはずがない! この情報は本物なんだ!!」 「今までどうもおかしいと思っていたんですよぉ。 兄様なのに弟様の方が成績いいだなんて」 ―――その声は俺の心に突き刺さるぜ。 ―――といっても努力なんてしてこなかったのが悪いから、反論もないけどな。 急に態度を変え媚びを売る者まで現れた。 「今までルーファス様に蹴落とされていたと思うと本当に胸が痛い。 一番酷いのはこんな嘘を抱えていながらも平然としていられるルーファス様だ!!」 「そうだそうだ! オズ様に謝れ!!」 非難する声がルーファスへ向いた。 それを制御するようにオズは一歩前へ出る。 「あー、いいんだいいんだ。 ルーファスは何も悪くない。 もっと酷いのはこういう結果にさせた俺たちの両親なんだから」 「オズ様、なんて心がお優しい・・・」 その時タイミングよく父親が現れた。 二人の父親は現在の国王である。 といっても王も定期的に開かれる選挙で決まるこの国ではそれ程大した権力はない。 選挙で負ければ何もかも剥奪されてしまうようなか細い存在。 ただし、現在のルーファス家はそれなりの期間国王として君臨し続けている。 それが続けば影響力も増大していくのも自明であり、他の貴族や民衆、それらの人々と比べれば圧倒的な権力を握っている。 「オズ!! 何を言っているんだ!!」 今の発言が聞こえたようで怒気が混ざった表情でこちらへ向かってきた。 「何だ、このデタラメは!? しかもそれを肯定するなんてどういうつもりだ!!」 そう言ってブレイド家が配っていたチラシを見せてきた。 それに対しオズは冷たく言い放つ。 「今まで俺に対して無関心だった親がそれを言える立場か?」 「ッ・・・!」 「今までアンタらは俺の意見を無視してきた。 なら今度は俺がアンタらの意見を無視する番だ」 「なッ・・・」 そんなルーファス家でもこれだけの不祥事を揉み消すようなことは不可能だ。 告発から明らかに王の評判が落ちている。 慌てた様子で王はルーファスに意見を求めた。 「お、おい、ルーファス!! お前もどうして否定しない!? こんな根も葉もないデタラメ、まかり通るわけがなかろう!!」 「・・・お父様、もう民衆はそれが真実だと受け入れてしまったのです。 僕も頑張ってきましたがこれ以上は無理です」 「は、はぁ!? な、何を訳の分からんことを・・・ッ! お前自身が不利益を被るんだぞ!?」 「ですが嘘はもう隠し通せません」 ルーファスの言葉で民衆がざわついた。 本人の口から出た言葉が真実に決まっているのだから。 とはいえオズに対しての評判が上がってもオズ家の評判が下がれば選挙にも支障が出る。 そう思いオズは宣言した。 「ルーファスに代わって俺が選挙に出る。 いいよな、ルーファス?」 「・・・」 ルーファスは何も言わない。 「・・・選挙に出るって何をする気だ?」 冷静になって王が尋ねてきた。 「決まっているだろ? 庶民の待遇をよくしこの国を平等な国にするんだよ」 「なッ・・・! 今まで我々の家系がしてきたことを無にする気か!? そんなこと上手くいくわけがなかろう!!」 「さっきも言ったように俺はアンタらの意見を一切聞かない。 今までの俺に対しての行いに後悔するんだな」 「おかしい、どう考えたってそんなはずはないんだ・・・!!」 王はブツブツと言いながらどこかへと行ってしまった。
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