自堕落貴族奮闘記

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オズ視点 「オズ様・・・!」 「いえ、オズ様こちらを見てください!」 この時オズには人生初の空前のモテ気が到来していた。 周りには目移りする程の美しい女性が集まってきている。 オズは元々王族であるが普段は身なりも整えておらずだらしがないと思われているため女性はほとんど寄ってこない。 ―――何だ何だ、次から次へと勝手に女性が寄ってくるぞ? ―――これがトップになった特権か!? 元々美形のルーファスと兄弟であることに嘘偽りがないようにオズ自身も容姿はそれ程悪くはない。 今は順序こそ逆になるが、ルーファスの失墜が起こりオズが立候補することが脚本で決まっていたため一応身なりを整えてはいるのだ。 客観的に見ても王子様といっても間違いがない程にカッコ良かった。 ―――今日は変化が起きるから少し身だしなみを整えてきたけどこれ程だとはな。 ―――もっと容姿をきちんとしてくるべきだった。 「オズ様・・・! 王になった折にはウチの家を贔屓にしてください」 「私もお願いします。 後妻にしてほしいなどとも申しません」 「妾でも構いませんので何卒・・・」 今オズの周りは女性で溢れている。 先程婚約を求めてきた女性とは少しランクの落ちる貴族の娘たちだ。 ―――おいおい、ルーファスはこんなにいい思いを独り占めしていたのか? ―――想像以上でズルいじゃないか。 ―――・・・でも今日からは全て俺のものだ。 実際のところはルーファスは頭がよく釣り合わないと思った女性はアプローチをしていなかった。 しかしオズならもしかしたら自分でも、そのような思惑で女性たちは集まってきているのだ。 もしオズが彼女たちを受け入れれば先には尻に敷かれ操り人形のようにされてしまうだろう。 成績が入れ替わっていたなんて情報は関係なくオズは彼女たちから内心では愚か者だと思われている。 そのような思惑など露とも知らずオズが貴族たちを適当にあしらっていると先程料理を作るよう頼んだシェフがやってきた。 「オズ様、ストックしていた料理は全て国民に配り終えました」 「おぉ、そうか。 みんな喜んでくれているみたいだな」 振り返り美味しそうに料理を頬張っている庶民を見る。 その光景はとても気持ちがよかった。 「オズ様の評価も鰻登りですね。 ありがとうございました」 「いいってことだ。 ・・・ん? その娘は?」 空いた皿を店の中へと運んでいく一人の女性を発見した。 髪を後ろで結っていてまさに働く少女といった風体だが、横顔を見るに可憐で汗の浮いた額を拭う様子がオズにとって輝いて見えたのだ。 「あれは私の娘でございます」 紹介されると視線に気付いたのか娘はこちらを見て会釈してきた。 目鼻立ちが整っているといった感じではないが、正面から見てもかなり好みである。 「幼き頃から仕事を仕込み料理の腕は既に私に迫る程。 とはいえオズ様とはとても釣り合いませんが・・・」 「いや、いい! その娘、俺がもらった!!」 「・・・はい?」 「容姿も優れているし料理もできる。 最高の女性じゃないか!!」 「あ、いや・・・。 いえ、分かりました」 オズの言葉には逆らえないと思ったのだろう。 シェフは手招きして娘を呼んだ。 「話は聞いていたな?」 「えっと・・・」 「オズ様が望んでいるんだ。 有難くこの話を受けなさい」 「・・・でもそれだとウチの店が」 「大丈夫だ。 結婚してからもお店に出てくれればいい」 オズが話に割って入った。 そう言うと既に決まっていた貴族である婚約者が声を上げた。 「ちょ、ちょっと待ってください、オズ様。 庶民である彼女を本当に後妻に迎えるおつもりなのですか?」 今までのこの国では考えられないことだった。 だがオズの考えは違う。 「あぁ、本気だけど? というか後妻じゃなくて本妻だが? 知っていると思うけど俺は貴族と庶民を平等にしようと思っているからな」 「え、あの、私は・・・」 「君も本妻に決まっているだろ」 「はぁ・・・」 婚約者は困惑した表情を見せる。 「あ、そうだ! 君のお金をこの子にあげてくれよ」 そう言って料理人の彼女を見た。 「お金をあげる・・・?」 「少しくらいあげても問題ないだろ?」 「確かに私はお金に不自由はしていませんが・・・」 「だろ? そうすれば店も大きくできるしもっと多くの人が美味いものを食えて最高じゃないか」 「はぁ・・・」 周りにいる誰もが彼の無茶苦茶な言い分に困惑していた。 その中でオズだけはいいことをしたと思っている。 そして全て上手くいくと思っているのだ。 ―――これが俺のやり方、望んでいた国だ。 ―――貴族の金を庶民に与え皆平等になる。 ―――争いは起きない、最高の国じゃないか。 ―――でも当然国民をまとめるためにトップは必要だ。 ―――トップである俺だけは少しいい思いをするかもしれないけどそれは仕方ないよな?
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