自堕落貴族奮闘記

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―――マズい、マズいマズいマズいマズい・・・ッ!! ブレイドと別れてオズは頭を抱えていた。 その場にしゃがみ込みこの世の絶望を味わっている。 ただオズがそんな風に思えるのはある種今までの人生を堕落して生きていたからだ。 特に努力をするわけでもなく、苦労もせずいい家に生まれたというだけで大きな挫折を経験しなかった。 もちろん弟であるルーファスに対して常に劣等感を抱いてはいたが今まであまり気にしないようにはしてきた。 そのようなオズが今本気で頭を抱えている。 ―――何とか誤魔化すことはできたけどこれじゃあバレるのは時間の問題だ。 ―――これまで色々とやってきたこと・・・。 ―――といっても実際自分で動いたのは昨晩の成績交換だけだが全てが無駄になってしまう。 ―――いや、もしかすると既にブレイドは俺が侵入者だと確信しているのかもしれない・・・! 選挙が始まりその最中にそれを暴露されればオズに投票する者など誰もいないだろう。 このままではロイと共にのんびりとした人生を送る夢が消えてしまう。 ―――いっそのこと投票が始まる前に俺から自白するか? ―――そうすればルーファスがもう一度選挙に出て勝てる・・・。 ―――いや、それじゃあ庶民は結局追放されてしまうじゃないか!! ―――もう、どうしたら・・・ッ! ―――俺は他力本願に全てをルーファスに頼ってきた。 ―――昨晩の侵入も自分で決めてやったことじゃない。 酒池肉林を手に入れこの先の人生ウハウハだと思っていた。 それを失う恐怖。 城の一室で誰からも必要とされず生きていく日々には戻りたくなかった。 ―――そうだ・・・! ―――庶民を追放させないよう父さんを説得させればいいんだ!! そう考えた瞬間既に動き出していた。 ―――あれ、思えば自分でやるべき行動を初めて実行に移せたな・・・。 ―――俺も少しは成長したのか。 急いで城へ戻り父の部屋へ向かった。 「父さん!!」 「何だ、出来損ない」 「・・・ッ」 父は背を向けて外を眺めていた。 その時偶然隅に白い四角い箱があるのが目に入る。 ―――あれ、あの箱どこかで・・・。 「私を甘く見過ぎたな。 あんな下手なことをして誤魔化せるとでも思ったのか?」 どうやら父は成績の入れ替えがオズによって実行されたと分かっているようだ。 「せ、成績を入れ替えたのだとしたらルーファスがまず否定しているはずだろ!?」 「そう、そこが解せんのだ。 何故アイツは否定しなかった? アイツが否定さえすれば誰も信じることなどなかったはずなのに」 「だから・・・」 「もういい、何も喋るな」 そう言うと父は振り返った。 「私は間違っていた。 選挙なんてもの自体する必要がなかったのだ」 「・・・どういう意味だ?」 「今まで続いてきた慣習なんて止めてしまえばよかったのだ。 私が王なのだからそれができる。 長い歴史なんて糞食らえだ。 ルールを破ることが駄目なら壊してしまえばいい」 「ルールを壊す、だって?」 「いや、そんなまどろっこしいことすら必要ないな。 ルーファスを殺そう」 「・・・は?」 あまりにも唐突過ぎて理解が追い付かない。 「そしてお前とブレイドも殺してしまおう。 そうすれば未来永劫私が王だ」 理解不能な父に恐怖を感じオズは後退る。 「・・・何を言ってんだ、お前・・・」 「口を慎めぇぇぇぇ!!」 「ッ!?」 その怒声は今まで聞いたことがない程に激しかった。 あまりの剣幕にオズは何も言えなくなってしまう。 「まだ私だって若いのに若造に王の座を譲らないといけないだなんておかしいと思っていたんだ」 父はジリジリとオズとの距離を詰めていく。 「そ、そんなの、アンタだって先代から受け継いだんだろうが!」 「そんな昔のことはもう忘れた。 とはいえ時期王候補を殺すだなんて誰も賛成しないだろう。 だから私自ら三人共葬ってやる。 そして三人は不幸な事故に遭ったと国民に説明する」 「・・・狂ってる」 父は踵を返し壁にかかっていた剣を手に取った。 オズは何とかしようと思いここへ来たが流石に武器は持ってきていない。 ―――何か戦えるもの・・・! ―――いや武器を持つ父さんに勝つことは当然不可能だし、そもそも俺の運動神経じゃ無理だ!! 迫る攻撃を必死に避ける。 だが避け切れず腕を軽く斬られてしまった。 血が飛び散り痛みが弾ける。 親には見放されていたため殴られたことすらなかったのに。 「くッ・・・。 痛い、痛い。 ・・・異常者め」 「ルーファスを斬る時は少しは心も痛もうが出来損ないのお前では寧ろ清々しい気分になるな」 「ふざけるな!!」 オズはどうにかかわし部屋の外へと出た。 「おい、待て! 出来損ない!!」 だが父は今の姿を見られてはマズいと思ったのか追ってくることはなかった。 ―――何とか逃げ切れた。 ―――・・・これは緊急事態だ、ルーファスと相談しなくてはならない。 オズはルーファスのもとへと急ぐ。 その間中部屋に置かれている白い箱が微小な駆動音を放っていることに二人は気付くことはなかった。
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