5.不協和音

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 衣都が抱えていたものを受け止めきった律は、手を額にやり天を仰いだ。   「そういうことか。まさか、隠し撮りされていたとはな」 「心当たりがあるの?」 「俺の口からは言えない。こればかりは本人に聞いてくれ」  律はそう言うと、響の秘書として沈黙を守り続けた。  結局、最後まで真実は教えてもらえなかった。  片づけが大体終わると、律は衣都をレジデンスまで送り届け、逃げるように帰って行った。 (酷いわ)  聞いてみろと言われても、聞けるはずがない。  もし、写真は事実で、衣都とは偽装結婚だと肯定されたらどうしてくれよう。  物事をすべてはっきりさせることが、必ずしも正しいとは限らないのだ。  ため息をつきながら玄関の扉を開けると、響が出迎えに廊下を走ってやってきた。 「衣都、おかえり。随分と遅かったんだね。待ちくたびれたよ」 「帰るのが遅くなってごめんなさい」  響は衣都の肩を抱き、興奮した様子で捲し立てた。   「衣都を驚かせようと思って待っていたんだよ?本当はもっと早くに用意するべきだったよね」  何のことだろうかと首を傾げていると、リビングの扉が響の手で開け放たれていく。
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