6.梅見の会

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6.梅見の会

 誤解が解けると衣都はここ数週間の出来事を洗いざらい白状した。  紬と遭遇したことも、教室で何があったのかも、マンションが荒らされていたことも。すべてをありのままに話した。  響は衣都の話を聞き終わると難しい顔で腕を組み、何かを考え込んでいた。   「ひょっとしたら彼女の差金かもしれない」 「彼女?」 「……尾鷹紬だ」  紬の名前を出されても、衣都にはピンとこなかった。  待ち伏せされていた件は別として、他の二件については紬との関連性が見えなかった。 「彼女については僕も多少は知っている。類稀なるカリスマ性を武器に、社交界ではそれなりの人脈を築いているらしい。彼女に心酔している者同士、クローズドなコミュニティを形成していると聞いたことがある。心が弱っている人間なら、彼女が唆せばあるいは……」 「もしかして……おば様も?」  響は口を噤んだまま答えようとしなかった。  口に出しこそしないが、衣都と同じことを考えている節がある。 「衣都、もう尾鷹紬に近づいてはいけないよ。プライドを傷つけられた人間の逆恨みがどんなものか、知らないわけではないだろう?」 「それは……」  衣都の脳裏に十年前の記憶がありありと浮かんでくる。
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