6.梅見の会

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 四季杜家に身を寄せた衣都と律は、保守派の三宅一族から随分と恨まれた。  二人が株式の一部譲渡を行い、M&Aが決定的になると『裏切り者』と名指しされ、親戚の縁を一方的に切られた。  嫌がらせのように下世話な週刊誌に情報をリークされ、学校から帰る途中で尾行されたこともあった。  紬と彼等に共通しているのは、一度格下だと思った相手には容赦がないということだ。 「彼女は必ず衣都を標的にしてくる」  響はなんの迷いもなく断言した。あまりに躊躇なく断言するので不思議に思う。 「よくわかりますね?」 「僕と彼女は同類だからね。目的のためなら手段を選ばないし、どうするのが一番効果的か理解している」 「……効果的、ですか?」  響はクスリと笑い、首を傾げる衣都の手に自分のものを重ねた。 「そうだよ。袖にしたことを後悔させてやりたいのなら、衣都を攻撃するのが一番効果的だ。僕は君のためなら、地面に這いつくばることも厭わないしね」  そう言うと響は本当に床に片膝をつき、跪いてみせた。  突然の出来事に衣都はぎょっとし、身構えた。 「君に受け取って欲しいんだ」  響はもったいぶってゆっくりと上目遣いでスツールに座る衣都を仰ぎ見た。  左手が持ち上げられ、薬指にスルリと冷たい感触が走る。  響が手を離すと、そこには美しい指輪が嵌められていた。
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