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「こ、これ……!」
「うん、そう。婚約指輪だよ。こっそり作らせていたものがやっとできあがったんだ」
驚く衣都の顔を眺めた響は満足そうに、目を細めた。
薔薇をモチーフとした、華やかなデザイン。
大輪の薔薇の花びらの中央には、小指の爪ほどの大きさの美しいダイアモンドが輝いていた。
「綺麗……」
つい、左手を宙にかざして見惚れてしまう。
それにしても、サイズはいつ測ったのだろう。デザインだって、凝り性の響のことだから何回も試案を重ねたに違いない。
「気に入った?」
「はい、とても……。大事にしますね」
「衣都――」
響は衣都の名前を切なげに呼ぶと、そっと抱き締めてくれた。
宝物に触れるように慎重に。壊れ物を扱うように丁寧に抱きすくめられる。
衣都は響の背中に腕を回し、柔らかな抱擁に応えた。
……どうして、愛されていないと的外れなことを思ってしまったのだろう。
響の愛は時に激しい炎のように衣都を追い詰め、時にはそよ風のように衣都を優しくくるんでくれる。
変幻自在の愛のカタチ。
衣都はまだ、響から捧げられる愛の底を想像できないでいた。
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