6.梅見の会

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 今のところ、綾子から『出席する』という言質はとっていない。  夫であり、四季杜家総帥の秋雪からの援護も望めない。  綾子の説得そのものが、四季杜家に嫁ぐための試練のひとつというスタンスなのだ。 (今日が最後のチャンスかもしれない)  残された時間は少ない。衣都は今日の訪問に一層気合を入れて、臨んでいた。  バス停から寒空の下を歩くこと十分。ようやく四季杜家の門扉が見えてきたその時、屋敷の方角から一台の車がやってきて、衣都とすれ違った。  四季杜の屋敷までは一本道だ。他に屋敷はない。  後部座席に乗っている人の顔こそ見えなかったが、車種から四季杜家所有の車ではないことはわかった。  つまり、屋敷から出て行ったのは綾子ではない。  気合が空回りせずに済んでホッとする。 (それにしても、この時間に来客なんて珍しい……)  時刻は朝の十時を過ぎたところだった。  ランチタイムでも、ティータイムでもない時間帯に客がやってくるなんて珍しい。  衣都は不思議に思いながらも、いつも通り呼び鈴を鳴らし、家令に門扉を開けてもらった。
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