6.梅見の会

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「何かいいことでもあった?」  その日の夜、衣都は珍しく早めに帰宅した響と夕食を取っていた。  今日の夕食は鶏肉と野菜のグリルだ。  家政婦が腕によりをかけて作ってくれた衣都の大好きなメニューだが、それはそれとして。  衣都は待ってましたとばかりに喜び勇んで報告した。   「今日はおば様にお声がけできたんです。もしかしたらピアノを聴いてくださったのかも……!」  衣都の気持ちはここ数週間のうちで最も弾んでいた。  綾子が衣都のピアノを聴いてくれたのなら、まだ希望があるのかもしれない。 「そう、よかったね」 「はい!」  夕食が終わり、キッチンで食後のお茶の準備をしている最中も、衣都の上機嫌は続いていた。  その様子を壁にもたれかかりながら静かに見守っていた響が、おもむろに口を開く。 「ねえ、衣都?説得なんて回りくどいことをしなくても、母さんに強制的に結婚を認めさせる良い方法があるんだけど……」 「良い方法?」 「うん」  響は背後から衣都に近寄り、細腰をピタリと己に引き寄せた。 「初孫が出来たら認めざるをえないと思わない?」 「……孫ですか?」  衣都は後ろを振り返りながら、目を瞬かせた。結婚もまだなのに今から子どもの話をするなんて先走りすぎだ。
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