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(全然ダメね……)
梅見の会も中盤に差し掛かり、一旦響から離れ化粧直しをした衣都は、パウダールームの鏡の前で己の力不足を痛感していた。
会が開始して一時間。緊張のせいか疲労感を覚え始めている。
慣れないハイヒールとドレスで動き回ったせいかもしれない。
衣都が着ている背中が大きく開いたフラワーレースのドレスは響が選んでくれたものだ。
『梅見の会の主役は衣都だからね。君が一番美しく見えるドレスを選ばないと』
今宵の振る舞いの反省は後日するとして、今は少しでも響の期待に応えたい。
衣都は自分に喝を入れると、大広間に戻り、響はどこかと視線を巡らせた。
「あーあ。本当に目障りな人ね」
しかし、疲れている時に限って、聞きたくない話ばかり耳に飛び込んでくる。
「本当にいい気なものよ」
「二度も警察のお世話になっておきながら、この場にのうのうと顔を出せるなんて、意外と図太いみたい」
「ふふっ。私だったら耐えられなーい!」
それは、聞く人が聞けば誰のことを嘲笑っているのか伝わるような会話だった。
わざと衣都にも聞こえる音量で、面白おかしく囃し立てている。
なぜ、彼女達が警察沙汰になったということを知っているのか。
"誰のこと"なのか明言していない以上、衣都は黙って耐えるしかない。
ここで、彼女達を問い詰めたら、話の種になっているのは自分だと名乗りをあげるようなものだ。
だからこそ彼女達も人目を憚らず、好き放題言えるのだ。
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