6.梅見の会

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「おば様?私に見せたいものって……」 「ここよ」  綾子が立ち止まったのは、洋風のアーチが取り入れられた土蔵の前だった。  綾子は(かんぬき)を抜き取り、観音開きの扉を、目一杯開いた。 「さあ、中に入ってちょうだい」  入れと促され、衣都は困ってしまった。  土蔵の中は、最低限の掃除は行き届いていたが、埃っぽい上に、明かりもなく、絶望が口を開けて待っているようでそら恐ろしかった。  どうしても一歩が踏み出せず躊躇っていると、ドンっと強く背中が押された。 「きゃ!」  つんのめった衣都は冷たい床の上に投げ出されてしまった。  身体を起こそうとしている途中で背後でバタンと扉が閉まり、閂が擦れる重たい音が聞こえた。  辺りが闇に包まれていく。 「待って!」 「ごめんなさい!でも、こうするしかないの!」  綾子は震える声で衣都に詫びた。 (嘘でしょう!?)  衣都は暗い土蔵にひとり閉じ込められてしまったのだった。
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