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「本当にやるんだね?」
「はい」
改めて決意を尋ねると、衣都は何の迷いもなくそう答えた。こうなったら、衣都は響の言うことなど聞かないだろう。
「何を馬鹿なことを言ってんだ!さっさと病院に……」
「律」
響は妹の無茶を止めようとする律を左手で制した。
衣都の好きにやらせてあげたい。いざという時は責任は自分がとるつもりだった。
律はすっかり困り果てていたたが、やがて諦めたように顔をあげ、男性に声を掛けた。
「テーピングもお願いできませんか?必要な物は、こちらで用意しますので」
テーピングの準備をする間、響は衣都とこの後の段取りを確認した。
「ピアノまでは僕がエスコートする。なるべく僕に寄りかかって身体を預けてくれ」
「はい」
「靴も踵が低いものに履き替えよう。すぐに用意させる」
テーピングの準備が整うと、衣都は右足首を固定してもらった。
律はテーピングをしてもらっている衣都のかたわらで苦々しげに叫んだ。
「演奏が終わったら絶対に病院へ連れて行くからな!」
「ありがとう、兄さん」
衣都にお礼を言われた律は、更に渋い顔つきになった。
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