7.春を寿ぐ旋律

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   秋雪と響の逆鱗に触れた尾鷹家は、四季杜との取引を全面的に停止されるという未曾有の危機に瀕した。    しかし、綾子の取りなしがあったおかげか、今後一切、四季杜家に関わらないことを条件に、多少のお目溢しがあった。  紬は社交界でその悪行が知れ渡ると、良識のある人々から相当なひんしゅくを買った。  今後、彼女と好んで関わろうと思う人はほとんどいないだろう。  梅見の会を無事終えた衣都は予定通りコスモスハーモニー音楽教室に復帰を果たした。 「本日より復帰しました。今後ともよろしくお願いします」 「今日から改めてよろしくね、衣都先生」 「はい!」  和歌子から激励された衣都は元気よく返事をした。  結局、例の騒動に対するクレームよりも、復帰を熱望する生徒や保護者の数の方がはるかに多かったらしい。  自分のしてきたことが評価されたようで嬉しかった。 (さて、レッスンの準備を始めなくっちゃ!)  響の許しをもらったので、衣都はしばらくこのままピアノ講師の仕事を続けていくことになった。    
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