7.春を寿ぐ旋律

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   二人の結婚式は予定通り、その年の秋に行われた。  豪奢なウェディングドレスに身を包んだ衣都は、期待と興奮で胸を躍らせていた。  花嫁の母が担うベールダウンは綾子にお願いし、バージンロードを律と二人で歩いていく。  目の前には、愛する人が待っている。 「永遠の愛を誓いますか?」 「はい、誓います」 「誓います」  神父の前で愛を宣誓し、互いの手に結婚指輪をはめ合っていく。  婚約指輪に負けない見事なデザインの結婚指輪には、衣都と響の誕生石が埋め込まれている。  無事に結婚指輪をはめ終えると、いよいよ誓いのキスだ。  響は極上の微笑みで持って衣都を魅了した。  ベールがたくしあげられ、ゆっくり目を瞑っていく。  新郎のたゆまぬ愛を体現する長すぎる誓いのキスは、見守っていた招待客と律をとことん呆れさせた。  しきたりによって結ばれた二人だが、相思相愛なのは誰の目から見ても間違いなかった。
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