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「僕は四季杜家の『しきたり』に従っているだけですよ、父さん」
秋雪とハッと息を呑むと、背もたれに身体をあずけ、今度こそ押し黙った。
全く話が読めず、衣都はオロオロと視線を彷徨わせるばかりだった。
ところが、響の驚愕の発言はとどまることを知らず、さらに爆弾が投下されていく。
「昨日、衣都とセックスしました」
世界広しといえども、両親に性交を律儀に報告する息子は響しかいないだろう。
衣都は今度こそ倒れるかと思った。血の気が引いたなんて、そんな可愛いものじゃない。
「響さん、それは……!」
衣都は響に対して抗議しようとした。
昨晩の出来事を誰にも言わないように口止めしていなかったのは確かだが、よりにもよって尊敬する四季杜夫妻に言うなんてあんまりだ。
「本当なの?衣都ちゃん……」
「え!?あ、その……」
綾子から真剣な眼差しで問いかけられ、衣都はしばしの逡巡の末に小さく頷いた。
響とひと晩過ごしたことは最早、紛れもない事実である。
「ああ……なんてことなの……」
綾子は顔を両手で覆い、嘆き悲しんだ。
婚約前の大事な時期に、元居候の自分と身体の関係を持ったと告白されれば、当然の反応だろう。
「あの……。婚約間近と知りながら関係を迫ったのは私なんです!どんなお叱りでも受けます!だからどうか……」
「そういうことじゃないんだよ、衣都ちゃん」
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