1257人が本棚に入れています
本棚に追加
不義理を働いたと責められるべきは自分だと、主張する衣都を秋雪が遮る。
秋雪は低く唸り、最後には大きなため息をついた。
響だけが晴れ晴れとした表情で己の両親を見下ろしている。
三者三様の反応が出揃い、話についていけない衣都は途方に暮れた。
どうしようもない疎外感に苦しめられていると、響に肩を抱かれる。
「驚かせてごめんね、衣都。実は四季杜家には、ある『しきたり』があるんだ」
響はようやくこの状況を説明する気になったらしい。
「しきたり、ですか?」
四季杜家で長い間居候生活を送っていた衣都だったが、しきたりの存在については初耳だった。
「四季杜家の男子は『初めて』身体を重ねた女性と結婚しなければならない」
「……え?」
しきたりの内容を聞いた衣都は目を大きく見開いた。
(け、結婚……!?)
頭の中がいくつもの疑問符で埋めつくされていく。
昨日、衣都は目の前にいる響とベッドで甘いひと時を過ごした。
他の人と比べることはできないが、初めてとは思えないほど行為はスムーズに進んだ。
「響さん……『初めて』だったんですか?」
「そうだよ?」
響は特段恥じるでもなく、いけしゃあしゃあと言い放った。
最初のコメントを投稿しよう!