2.四季杜家のしきたり

8/19
前へ
/160ページ
次へ
「ということで、あとのことはそちらで片付けてくださいね?行くよ、衣都」 「え!?あの!響さん!?」  響に腕を引かれて立ち上がった衣都は、戸惑う秋雪と綾子を残し、リビングルームを後にした。  響に引きずられるようにして、長い廊下をバタバタと忙しなく歩いていく。 (なにがどうなっているの!?)  衣都は未だに混乱の渦の中心で、右往左往していた。  訳が分からないまま屋敷の外に連れて行かれ、響の車の助手席に押し込められる。  車はすぐに出発し、四季杜家から徐々に離れていった。   「衣都には今日から僕のマンションで暮らしてもらう。離れて暮らしていると結婚の準備も大変だからね」 「あ、あの……」 「荷物はあとで取りに行こう」 「えっ……あ……。はい……」  矢継ぎ早に今後の予定を決められ、とりつく島もなかった。  衣都は唇を引き結び、黙って耐えるしかなかった。 (結婚だなんて……。本気なの……!?)
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加