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「何が食べたい?疲れているなら、僕が買ってこようか?それかデリバリーでも……」
「話を……!聞いてください……」
たまらず声を荒らげると、響はパチクリと瞬きした。衣都が不満を抱いているとは、夢にも思わなかったようだ。
「私、結婚なんてできません……!」
ただ、思い出が欲しかった。
響が他の誰かのものになってしまう前に、ひと晩だけでいいから自分の心と身体に幸せな記憶を刻みつけたくて。
結婚なんて大それたことを望んでいなかった。
自分がしでかしてしまった事の重大さに、衣都は怯えていた。
「そんなつもりはなかった……とは言わせないよ」
響はそう言うと、衣都の身体を強引に引き寄せた。
「んんっ……!」
突然、唇を塞がれ、衣都は喘いだ。
身体には昨夜の余韻がまだ残っている。
ひと晩かけて植えつけられた記憶は鮮明で、溺れるように何度も繰り返した官能的な舌の動きを覚えていた。
ようやく唇を離してもらえた時には、息も絶え絶えになる。
「ひと晩だけの都合の良い関係で終わらせられる安い男だと思っていたのかい?」
「それは……!」
「後悔しないと頷いたのは君だ」
はっとして、響の瞳を覗きこむ。
最初から響の手のひらの上だったということに、今更ながらに気づいてしまった。
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